4人が本棚に入れています
本棚に追加
握手を求められ、自己紹介と一緒にそれに応じる。ルドルフさんは老人というより老紳士と言った方がしっくりくる。レインによると村中を歩き回って調べた結果、この畑の白スイカが今いちばん多く狙われているようだ。そもそもこの畑は村の外側に近く規模が大きいため狙われやすいそうだ。 実際オーナーのルドルフさんもいちばん多く被害に遭っていると感じていると話してくれた。
「それとね、魔物の種類も特定できたよ」
「そうか。……………………えっ? もう調べたのか?」
「そう言ってるじゃん!」
これは驚きだ。レインはもともと情報収集が得意だということは知っていたが、ほんの数十分でここまで調べてしまうとは。
「いいお兄ちゃん? この村の作物を荒らしているのはラヴァウルフだよ」
「ラヴァウルフ? 火山地帯に住んでる魔物だろうが。この辺り火山なんてねーよ? ってよりもアイツら肉食だろ」
ラヴァウルフは褐色の毛に混じって燃え盛る炎のような赤い毛が生えている狼型の魔物である。狼型の魔物にしては珍しく群で行動することで有名だが、この近辺には生息していないはずだ。
「スコール君、君の妹の言っていることは恐らく本当だ。先日、荒らされた私の畑で魔物のものと思しき牙の破片を見つけたのだが、レイン君によるとこれはラヴァウルフのものらしいからね」
そう言ってルドルフさんが見せてくれたのは小さなエナメル質の破片。レインはこれを魔術的に解析したのだろう。
「それだけが証拠じゃないよ、お兄ちゃん。宿屋のおばちゃんがこの村には魔物退治のできる人が少ないって言ってたでしょ?」
「あー、そんなことも言ってたな」
「あれには理由があって、この村には魔物はあまり来ないはずなんだよ。だって、村のいろんなところにエンゼルオリーブが植えてあるんだもん」
エンゼルオリーブはただのオリーブではない。この木の樹液にはエンゼルジャムという成分が含まれていて、それは魔物の嫌がる匂いを発しているのだ。もちろん、全ての魔物に効果があるわけではないが。エンゼルオリーブが村中にあるなら、魔物はこの村を避けるのは当然といえる。
そして、魔物があまり襲ってこないという事実は魔物に対抗する戦士が育たないことも意味している。
「なるほど。確かラヴァウルフはエンゼルジャムの匂いに引っかからないからな」
最初のコメントを投稿しよう!