青い花

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「思い出してくれ」 老人は花の中に崩れ落ちるようにして跪(ひざまず)くと、妻の銀髪の頭をかき抱いた。 「勿忘草(わすれなぐさ)だよ」 噛み締める様に告げる夫の頬を、光るものが伝う。 「君が、昔、僕に教えてくれただろ」 ――しらなーい。 頭を抱かれたまま、老女は、虚ろな目のまま子守唄でも歌う風に語尾を延ばす。 「僕はずっと覚えてるよ」 老人は翳(かげ)って花と同じ青紫になった目を見開いた。 「君が全部忘れたと言っても」
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