プロローグ 全身麻酔からの覚醒

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   「始めに光りあり」というのとは違うんだな。まだ、この段階では、俺は「う~ん、う~ん」という恐ろしい唸り声しか認識できてないから、どちらかと言うと「始めに唸りあり」だね。  でも「唸り」を認識し始めた俺は、もう、「無」の眷属として空間に隠れていられるなんていうことは不可能になって、後はもう「この唸りは何だろう?」という「疑問」という知覚を核として、急激に自己の体を構成していった。  自己と世界の境目…自分の体の輪郭…を、朧(おぼろ)ながらに感じられるようになった俺。そこから先は、目まぐるしく次々と様々な感覚が俺に追突し、俺と一つになろうと襲いかかってくる。  唸り声の次は、ガチガチと打ち鳴らされる骨の音。そして、その高速に打ち鳴らされる振動に揺さぶられる俺の脳。振動によって急速に意識が覚醒し始める。打ち合わされているのは、どうやら俺の歯だ。顎がガクガクと痙攣するかのように震えている。まるで、凍える冬の日のように…  「…寒い…」  俺の第一声だそうだ。この声を発しているのが自分かどうか、未だ曖昧なので後で聞いた話によるのだけれど。  その声を境にさらに俺の覚醒は加速する。そう、寒いのだ。えっと…俺、裸?すっぽんぽん…全裸…では、ないな。なんとか薄い衣は羽織っているようだけど。
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