第3章 鍵と混沌と無の因子

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 運転席は親父。助手席が俺。つまり、2列目と3列目に異世界を故郷とする4名が座っている。  親父は、今度は事故らないようにバックミラーをチラ見しながら、後ろの4人の反応を見守っている。  (そうか。姫様たち…帰れるんだな)  俺は、僅かに10日間前後の付き合いだったが、もう、この面々を他人とは思えないくらい普通に打ち解けていることに今更ながら気づく。  車は海岸線を左折して離れ、今は農業振興地域を貫くバイパスを北上中だ。今、上を跨いだ太い幹線道路は…国道1号線だ。まだ開通して日の浅いこのバイパス道路は、貸し切り道路のような感覚で、すいすいと走ることができる。  それだけに…。親父からの発表を聴いて大喜びするか…と思われた4人が、さっきからお互いの顔を見合わせたまま一人も声を発しないことによる静寂が、路面を転がるタイヤの音だけを馬鹿に大きく響かせていた。  (そうか。因子の条件は満たしても、それを使うための要素(ルリミナル)をどうやって手に入れるか…そのアテが無ければ…喜ぶに喜べない…のかな?)
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