第3章 鍵と混沌と無の因子

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 「…疑ってすまんの。しかしじゃ。ワシも、この世界に来てからずっと考えておったし、姫様たちも恐らく同じ危険性を考えているのだと思うのじゃが…」  「分かってますってばよ。聞いた話じゃ、老先生たちの世界は、こちらよりずっと人口が少ないし、いわゆる機械文明も発達していない。…そして、人口の増加は、すなわちそちらでは即、戦争の理由になる。自国の民を飢えさせないためには…他人の領土を奪ってでも自分の領土を広げたい。…だから、こっちの人口密度からすれば、新たな世界の発見は、十分、侵攻する理由となり得る。…そう恐れているんでしょ?」  姫様が顔を下に向けて声を振り絞る。  「すまない。マモル殿や伝次郎殿を信用しないというのでは無いのです。でも、私たちは、今、まさに伝次郎殿が言われた理由で碧色の森泉国(イエメルアーダス)に大規模な侵攻を仕掛けられているのです。…いや、今に限らず…人口増加の周期に合わせるように必然的に私たちの世界では領土争奪戦争が繰り返されてきました」  「ふん。ま。そんな事情なら…こんな人口密度の高い世界の人間が自由にそっちの世界へ行く手段を手に入れたとした時に、侵略してくるに違いない…と思ってもしょうがないだろうがな」
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