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太陽の日射しが強い日の昼過ぎ、テストで疲れた体を引きずって学校から帰ってくると、7階建てのマンションのエントランス前に体育座りをした女の子がいた。
幼さの残る顔立ちから同年代であることは間違えない。
風でなびく橙色の髪に押さえ、誰かが来るのを待っているのだろう。
ただ、おかしな点を上げるとすれば女の子は何故か巫女の格好をしているのか疑問に思うくらい。
私なんかには知り得ない事情がそこにあるのだと思いエントランスへと入った。
手提げ鞄から鍵を探していると、お姉ちゃんと言う声が耳に届く。
やっぱり鍵が無くて入れなかったんだと内心一安心していると、ブラウスが引っ張られるような感覚を全身に伝わる。
まさかと思い振り返ってみれば、橙色の髪の巫女がブラウスを引っ張っているではないか。
私には妹なんていないという言葉を最後に思考は停止した。
どのくらい沈黙が続いたのだろうか。
すると橙色の髪の巫女は首をかしげ私を再び『お姉ちゃん』と呼んでくる。
そもそも私は同年代の女の子に“お姉ちゃん”と言わせる趣味はない。
催眠術なんて高等技術すら持ち合わせない平凡な女子高生だと認識している。
有り得ない。訳がわからない。
私の家族は、お父さんとお母さんそして私の3人でこのマンションに住んでいる。亡くなった兄弟はいない。
そこに間違えない。
だからこそ、巫女が私を“お姉ちゃん“と呼ぶ理由は1つしかなかった。
「あの…人間違えだと思うんですけど」
こんなドッキリいらないから、家に帰って寝よ。
きっと疲れているんだ。
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