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「お姉ちゃん、落ち着いた?」
「うん」
妹に慰められる姉っていったい。
はっ!?
私、巫女を妹だと認識し始めてる。
親に聞くまで認めない。
「いい加減認めてよ。実の姉に否定され続けると心痛くなるんだから」
「そ…そうだね」
妹を名乗る巫女に鼻を啜りながら、認めてと言われると心が痛む。
仕方ない。
エントランス前でもめても解決しないから家にいれよ。
「玲奈って言った?仕方がないから家に入れて上げる」
すると妹を名乗る巫女は、ガッツポーズを決めて喜んでいる。
それを見た瞬間、泥棒ではないかと抱かずにはいられなかった。
目を離さないように監視してよ。
私は手提げ鞄から取り出した鍵でエントランスのドアを開け3階の我が家を目指した。
7階建てのマンションの3階にある我が家を開る。ただいまと言っても奥から声が聞こえはこなかった。
それもそうだ。
両親は共働きで平日の昼間に家にいる事なんて滅多にない。
私が言った“ただいま”という一言は、誰もいない部屋へと吸い込まれていった。
「ただいま~」
玲奈はドアの前に立つ私の脇をすり抜け部屋へと入っていった。
錯覚だろうか。
視界に映しだされる世界が波を打つように歪曲を始める。
吐き気と漁船に揺られているような感覚にやられ立っていることが出来なかった。
ついに私は耐えられず膝を着いて目をつむり収まるのをじっと待った。
無意識のうちに耳に届く音を拒絶していたのか、『お姉ちゃん』と呼ぶ声を聞いた。
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