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特にこの日がいいから、この日に打ち明けようとか考えていなくて…そもそも、その事を打ち明けようとも考えていなかったのに…。
櫂くんの部屋で夏休み明けのテスト勉強をしている時に沈黙が続いてしまって、思わず口からこぼれ落ちてしまった一言だった。
「……あ、…」
シャーペンを握っていた右手がシャーペンを離して口元に当てる。ハッと気付いた時には既に遅くて、一度口からこぼれた言葉はもうどうする事は出来なかった。
「…お前の学力なら、もっと上の高校を目指せばいいだろう?」
読んでいた本のページをめくる手を止めて、本へと向けていた視線を僕の方に向けながら櫂くんはそう言った。
(え……?僕がいきなり変な事言ったのに、櫂くんは怒らないの…?)
「そ、そんなことないよ…僕は頭良くないよ。それに……櫂くんと一緒の高校に行けたらいいなって思って…」
「……そうか」
「う、…うん……」
ちゃんと櫂くんの目を見て話せなくて、櫂くんと同じ高校に行きたいって言うのは櫂くんに出会ってから、ずっと目指している事だから…だからって、まさかこのタイミングで言うなんて思ってもいなかった。
(どうしよう…どうしよう…何か話さなくちゃ…でも、気まずい…)
「それなら、毎朝一緒に登校出来るな」
「え……?」
「嫌か?」
「ち、違うよ…そうなったら、嬉しいよ!」
予想もしていなかった櫂くんからの言葉に動揺してしまったけれど、パニックになってるけど、嬉しくて…ただ嬉しくて…
「早く、そうなればいいな……」
「うん…そうだね」
「頑張れ、応援しているからな」
そう言って僕の頭を優しく撫でてくれる櫂くんの手の心地良さに思わず口元が緩んでしまう。彼の事が大好きなんだって再確認した…
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