魔女のユーミン

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 数日降り続いた雨があがった。ユーミンは、玄関を開け放して外の干し場に布団を抱えていった。 「やっと布団が干せる。しばらく天気が続くといいんだけど」  布団を軽く叩きながら、薄く千切れた雲の浮かぶ水色の空を見やる。  乾き始めた晩秋の風が少女の短い黒髪を揺らす。   黒の長袖と細身のパンツ。ショートブーツを履き、腰のベルトには大きなポケットを下げている。一見すると少年に見紛う風貌。街で暮らしている同年代の少女ならば親の庇護のもとで学校に通っている年齢だ。まだあどけない顔立ちを、意思の強そうな黒く大きな瞳が引き締めている。  朝日のもと、一匹のこうもりが家の中からさまよい出た。「彼」はふらふら飛んで、少女の肩に着地した。 「晴れたな……」  小さな目をしばしばさせてつぶやく。少女の耳に人間のものとして届くその声は、彼女と同じか、少し上くらいの少年の声だった。  ユーミンは肩の上の柔らかな体をそっと撫でる。 「眠そうだね。まだ寝てればいいのに」 「つれないこと言うなよ。俺はお前と一緒に寝て一緒に起きたいんだからさ」 「そう? でもヴィーは夜行性だから」  ヴィーと呼ばれたこうもりは、眉をひそめる代わりに軽く羽ばたいた。  一人分の少ない洗濯物を干し、家の横手に積んである薪の束を一つ持って家に入る。 「今日は飛ぶ練習しないのか?」  ヴィーが聞く。 「今日はしない。あっちを完成させちゃいたいから」
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