魔女のユーミン

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 室内は狭い。大きなテーブルが一つと椅子が二つ。それと日用品や食料を置いた棚で家具はすべてだ。  部屋の奥には古いかまどがある。湯気を立てているやかんを下ろしてから、薪の一本を火にくべる。棚にいくつか並んだ瓶のうち、一つを取り出す。自家製の茶葉が詰まっていた。  ユーミンはお茶を作り、蛙のイラストが入ったカップを持って出窓に腰かけた。  オーブンでケーキが焼ける匂いにつられて、二匹のたぬきが窓の下まで来ていた。体の大きい方がふくよかな声で挨拶する。 「おはよう、ユーミン。今日もいい匂いがしてるね」 「昨日山栗をもらったんだ。甘く煮たのを入れてみたんだけど、どうかな」 「おいしいに決まってるさ。ユーミンが作るんだから」  得意げな口調で言ったのはヴィーだ。体の小さい方のたぬきも口を添える。 「今までにユーミンのお菓子がおいしくなかったことはないものね」 「もちろん!」  全身で同意を表してヴィーが大げさな身振りで羽ばたく。ユーミンはそれを半分困った表情で見やる。ヴィーが彼女に対して率直に示す好意には、時々困惑させられる。ヴィーが期待するほどには、ユーミンは自分の能力を信じられない。  山栗のケーキが焼き上がったとき、窓の外にはたぬきとりすと、うさぎと野ねずみが集まって来ていた。体の大きさに応じて分けてやりながら、大きな一かけらは紙に包んで取っておく。後で樫の木の根元に住む熊に届けるのだ。ユーミンがマリオと呼ぶ老齢のその熊が、山栗をくれた張本人だった。
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