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「どうかな」
昼も近づいたころ、ユーミンはパレットをJの前に置いた。初夏の溌剌とした萌える緑がそこに再現されている。
「いいんじゃないか」
用意していたように澄ました表情で短く答える。尾がぱたんと起きて倒れる。
反応を見たユーミンの顔は浮かない。
「いまいちってこと?」
「上等だと思うよ。お前の年齢ならこれが限界だろう。つまり、パーフェクトって意味だが」
褒めているのだろうが、喜べない。Jはユーミンが生まれるよりずっと前から何人もの魔法使いに仕えてきた上級の使い魔だ。自然、若く未熟なユーミンに対しては物言いが上からになる。
噛みついたのはこうもりのヴィーだった。威嚇するように羽根を広げる。
「お前よお、言い方ってもんがあるだろ。褒めるんならそれらしい言い方をしろよ」
「気に障ったのならすまない。性格でね。――素晴らしい色だ。ユーミン以外の見習い魔女には作れないだろう」
「――ありがとう」
ユーミンはとりあえず礼を言う。律儀に付けられた「見習い」という語がいささか邪魔だ。
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