1、お見合い話 ~SIDE 香澄~

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   ――な、嘆かわしいって!? 普通実の娘に向かってそこまで言う?  母の暴言に香澄は驚愕した。  会社が休みの日曜日に自分の家の居間でごろごろしていて何が悪いのか。  平日はきちんと規定の時間、会社の業務を行っているし、給料に決して満足はしていないが、一般的な会社の事務としての額は貰っている。  母だってあの会社に就職が決まった時は、この不景気にきちんとした就職が出来て良かったと言ってくれたではないか。  言い返そうと香澄は自分の格好と自分の周りの環境に目を配らせる。  今の香澄の格好はと云えば――。  着古した量販店で購入した伸びたスエット記事のワンピースに、外に着ていけなくなった毛玉が発生したレギンス。  髪はきちんとブローもしていないぼさぼさな状態を、邪魔だからと黒い髪ゴムでひとつにくくっただけ。  ソファーの前のローテーブルには、金曜の夜会社からの帰宅途中で寄ったコンビニで買った新作のお菓子と、大好きな豆乳飲料が広げられ、まぁなんというか乱雑な状態だ。  そして彼女が何をしていたか、と問われれば。  日曜の真昼間から、平日のお茶の間を楽しませてくれる某人気テレビの総集編を眺めていただけなのである。 *
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