5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
ちなみに母は、午前中からスポーツジムに通い、既に一汗流してきたようだった。
いつもよりスポーティな格好をしているに関わらず、化粧だけはバッチリと施されている。
人に会う場所にいたのは一目両全だ。
まず、そこからして怠け者のような香澄と母の日曜の過ごし方が違う。
そしてこのジムが曲者なのだ。
母のような子供が手を離れ、多少経済的に余裕が出来たミセス達が集うスポットである。
話は夫のこと、子供のこと――特に娘の結婚――、そして孫ことなのではないか、と頭を働かせなくても分かりきった内容が、さかんに尾ひれ背びれをつけて交わされるのだろう。
想像しただけでも、身の毛のよだつそうな恐ろしい環境である。
「あんた、いい加減に結婚しなさいよ! 孫のひとりでもお母さんとお父さんに見せてあげようって娘としての気概はないの!?」
――ビンゴ! まさにそんな内容で突っつかれてきたな!
「な、何であたしばっかり結婚しないといけないのよぉ!」
「あんたばっかりとは何よ! 世のお嬢さん達は皆もう結婚を視野に入れて動いているのよ」
人は人、自分は自分である。
どうして人と全く同じことをしなければいけないのか、香澄には意味が分からない。
*
最初のコメントを投稿しよう!