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香澄はぱちぱちと瞬きを繰り返す。
驚きを隠せない表情から、少し唇をかんで考え直してみる。
――でも……。そんな出来すぎた話なんて。
そんな役員のご子息だったら、こんなお見合い話なんぞ子会社の一社員の娘へもってこなくてもいいはずだ。
「もしかして、とんでもない放蕩息子なの? それかすっごい年上? 女遊びが酷くて同じ会社じゃ貰い手がいない、とか? 後は……」
考えられる可能性を指を折りながら一個づつ口に出してみる。
「はっ、それかすっごいぶさいく!?」
疑問符を10近く数えた最終的な答えが導き出された。
「……人並みの領域を出ないあんたがいえる台詞じゃないでしょう! 馬鹿は休み休み言いなさい」
最終結論を出した香澄の頭をぺしりと母の掌が叩いた。
確かに言いすぎだった。いい良識を持った大人として発言してよい台詞ではない。
「……ごめんなさい」
「それに彼のご両親は一度拝見したことがあるけれど、お2人ともとても素敵な方よ。 あんたの心配は無用よ」
何より怖いのは、と母は続ける。
「その致命的にない色気に先方が呆れ果ててため息をつくことくらいかしら」
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