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前を向いて歩いていた先生が立ち止まり、ハニーブラウンの髪をなびかせて方向転換した。
先生の冷たい指が俺の耳に触れ、さわさわした感触がくすぐったくて思わず眉をしかめた。
「……っ、ちょ、ちょっと!なんですか?!!」
「頭…痛くない?吐き気とか、クラクラするとか」
「………っ!」
近い!!
息が吹きかかるくらいの近さに先生の顔が近付いてきて。それがあまりにも綺麗で、驚いて目を見開いた。
中性的で女の人みたいに綺麗……だけど、カッコイイんだ。
「しませ……!っ?!」
如月先生を突き放し、後ずさった瞬間。目の前がチカチカ光って、目眩がした。
「ダメだ。病院行こう」
深刻な表情で先生はそう言った。
そんな……たかがボールが当たっただけで病院に行く必要あるのかな
「え?でも別にそんな…大丈」
「いーから」
俺の声を遮って肩を抱かれ、顔を覗き込まれる。
「わ……っ!ちょ、近い…です」
「君の顔色を見てるだけ。ダンス部の顧問には連絡しとくから安心してね、松井くん」
なんで俺の名前、知ってるんだ……?
健康体なことだけが唯一の自慢な俺は、入学して2ヵ月の今現在体の不調はゼロ。
だから、保健医である如月先生は壇上でしか目にしたことがない。
しかも今年来たばっかりなのに……
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