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南は反射的に振り返った。
朝焼けを受けて、二つの人影があった。
人の気配なんて、今までしなかったのに。
男の人と、手をつないだ女の子。
二人はとても幸せそうに微笑んで、南を見ていた。
朝焼けよりもキレイな笑顔だった。
「心配しなくても、君は素敵な大人になるよ」
男の人は微笑んで言った。
何もかも知っているよ。そんな瞳をしていた。
「だから、ミーナ、こっちへおいで」
男の人は優しく笑んだまま手を差し伸べた。
「ミーナ」は南のことらしかった。
南は自分がとても素直にその言葉に応じるのを不思議に思いながらも彼らに歩み寄った。
女の子はとてもうれしそうに満面の笑みを浮かべた。
「ママ」
女の子がそう言ったけど、南はなんとなく嬉しくて、否定せずに微笑み返した。
女の子の目が涙でうるんで、口がへの字になって、そして南の方に手をのばした。
南はそうするのが当然だという気がして、女の子を抱き上げた。
身近に子供がいないから、この子がいくつくらいなのかわからない。
でも、ずっしりとした重みが心強かった。
「今日は、10月17日?」
男の人が聞いた。
「うん。多分」
南は答えた。日にちなんて数えない日々をここ2週間ほど送っているから確かではないけれど、そのくらいだったはずだ。
「そう。なら、早くここを離れよう」
男の人は言って、南の肩に手をまわすと歩き出した。
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