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 浜をしばらく歩いて、夏の間は海の家になる小屋の軒先に座った。 「懐かしいな」  男の人は目を細めた。 「パパ、来たことあるの?」  女の子は当たり前のように南と男の人の間に座っていた。 「あるよ。ずーっと前。ひいおばあちゃんのお葬式のとき以来だけど」 「ふーん。ユウは来たことないよ?」 「ユウキも、小さい頃に来たんだよ?」 「ふーん」  女の子の名前はユウキというらしかった。  南は二人の会話を聞きながら朝陽をうける湖をとても静かな気持ちで見つめていた。  とても穏やかな気持ちになっていた。  エリカをイジメていた頃も、それが発覚したあとも、ずっと気持ちが悪かった。  それが、なくなっていた。  エリカのことは、はじめから気に入らなかった。  自慢話ばかりして、いつも人を見下そうとしていた。  みんなエリカのことを嫌いだった。  だから、そんなみんなの気持ちを南が代表してやったのだ。  みんな南に追従した。  だれもエリカをかばわなかった。  南はみんなの信任を得て、どんどん増長していった。  エスカレートしていく、一人歩きしていく自分の行動に、薄ら寒い思いをしながらも、やめられなかった。  先生がクラスの雰囲気に気付くほどに、エリカへのイジメはヒドくなっていた。  担任が南を首謀者と目したのがわかったとたん、今度は南が無視された。  南は反論しなかった。  かわりに、学校へ行くのをやめた。
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