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女がゆっくりと僕の方に向き直る。
「まぁ……でもお似合いのカップルかな? あなたもなぶられて相当喜んでるみたいだしね」
女が素早い足取りで舞台から降り、舞台上の男たちに笑いながら言った。
「この娘ね、指で弄られるのが好きみたい。見たでしょう? 指で優しく弄ってあげなさいな。良い声で鳴くから」
そう言って、僕の方に戻って来た。
舞台の上では、十字架の女――僕の彼女が一斉に男たちになぶられ、悲鳴をあげていた。
「……いつ、僕の彼女だとわかった」
戻って来た女に問うと、女が不敵な笑みを向けた。
「勘」
それだけ言って、僕の耳もとに唇を近づける。
「あなたの視線がね……普通のそれとちょっと違ってたから、当てずっぽうで言ってみたら正解しちゃった」
艶っぽい声に背筋がぞくりと粟立った。
それよりも……と女が続ける。
「さっきの言葉。前言撤回するわね」
そうしてゆっくりと懐から一枚のカードを取り出す。
それは名刺だった。
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