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――七月九日、近所で行われた、夏祭りの帰りの出来事だった。
自宅方面、南西の空がほんのり紅に染まっていた。
夕日の時間にしては、もう遅すぎるはず。と言っても正確な時間はわかっていないが、祭りが終わったのは夜の九時。
最後まで堪能してからの帰宅と考えれば、現在がどんな時間かは安易に想像できた。
じゃあ、あの光は何なのだろう。遠くからの曖昧な景色は、一歩、また一歩と進める度に明瞭になる。
そして、明瞭とになるにつれて、抱き出していた不安は、家に着く百メートル前から遂に絶望へと変貌した。
溢れんばかりの人だかり。真っ赤な消防車が、それ以上に真っ赤になってしまった自分の家に、水を掛けている。
火の独特な鼻を刺す嫌な臭い。燃えているのは自分の家。家には、母親が一人――。
きっと逃げている。そんな淡い期待も、すっかり見物客と化していた野次馬の一言でかき消された。
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