Drop†.1

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 玄関を出ると、広大な校庭が広がっている。  毎年二月に開催されるマラソン大会のコースに含まれるトラックは、一週四百メートルを誇る。 さらに、バスケットやテニスのコートも完備されており、全ての敷地を合わせると全国でも五本の指に入るほどだ。  しかし、テストの二週間前である今日に至っては、部活動の停止期間。広大なグラウンドに人は一人もおらず、静寂を貫いている。  そう、テストが近い、大事な時。なんで自分は寝てしまったんだろう。頭の中で考えても、答えは出て来ることは無く、答えの変わりに、妹の声が見付かった。 「ち、ちょっと待ってよ!?」 「待ってくれてたところ悪いんだけど、先に帰っててくんね?」  そう言うと背後から走ってきた少し息切れしている彼女に、申し訳なさそうに鍵をポケットから出すと、彼女に投げ渡した。
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