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薄暗い洞窟の中、ヒザを抱える彼女は小さく震えていた。
(俺が幽霊じゃなかったらギュッと抱きしめて、暖めてあげるのに!)
「気持ち悪・・・」
(え、俺のこと?いや、気のせいだろ多分)
とりあえず、志穂ちゃんの体を暖めないとな・・・
よく見えないが・・・そばにあるのはどうやらほこらみたいだ。
この洞窟には、何かが祀られているのか・・・?
(・・・お?ほこらの扉の前に、何か置いてあるみたいだ)
これは・・・マッチだ!かなりの時代物みたいだな、中には1本しか入ってない。大事に使うとしよう。
他にも何か役立つ物はないかと扉に手を掛けてみたが、ほこらの扉は開かなかった。特徴的な取っ手がぶら下がっているだけで鍵が掛かっているようにも見えないが・・・。
岩壁に囲まれた洞窟の中、目を凝らしてみると壁の一面だけ仕切りのように金網が張られているのが見えた。金網の向こうは、完全な闇だ。だが、その金網には、この薄暗さでも見える白い紙が何枚もベタベタと貼られていた。
紙を集めれば使えそうだ・・・。そう思って貼られた紙を剥がし始めた。途中で暗闇に目が慣れたのだろう、掴んだ紙に描かれた奇妙な模様に気が付いた。何というか、漢字が適当に並んでいるような・・・。
いや、気にしてる場合じゃない。どんどん剥がすぞ・・・。
よし、結構集まったな
金網に貼られた紙を集め終わると急いで志穂ちゃんの近くまで戻った。志穂ちゃんの足下を見てみると、灰が散らばっていて、地面が白っぽくなっていた。誰か、焚き火でもしたんだろう。何十年も昔の事だろうけど。
その灰に被せるように紙束を置いた。これでしばらくは保つはずだ・・・。
ポケットからマッチ箱を取り出すと、中で乾いた音を立てて転がるマッチ棒を掴んだ。
どうか湿気ってないように・・・。一本しかないんだ。慎重に、確実に・・・
よし!火が点いた!
頼りないマッチの火が消えないように紙束へと火を点けると、小さな火はゆっくりと紙束へと燃え移っていった。焚き火の暖かさと明るさに照らされて志穂ちゃんが顔を上げた。
「ん・・・火・・・?いつの間に?」
(お、ちょっと元気出たかな)
「誰か・・・いるの?」
(ここにいるぞ。ふっふっふっ、気付くまいて)
さて、さくっと出口を探して志穂ちゃんをここから出そう。
まずは使えそうな物を探さないと・・・。
周りを見渡してみると、焚き火の明かりで周りの物が見えるようになっていた。
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