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美紗の不安は、数ヶ月後、街の桜の花が、散りはじめた頃、襲い掛かってきた。
それは、美紗にとっては、最悪としか、言いようのないものだった…。
洸一から、言われた言葉は、冷たく…今の美紗は、ただの足手まといでしかなかったのだ…。
「京都に帰れか…。」
生まれ故郷の京都に、帰りたくない訳じゃない…。
でも、帰るということは、自分のやってきた事を、否定することになる…。
それだけは、嫌だった…。
けれど、今の美紗には、選択肢はないに等しかった。
結局、何日も悩み、迷いに迷って、京都に帰る決心をした。
生活に必要な物は、たいしてある訳ではなかった…だから、みんな処分した。
アパートも、引き払った…だから、もう戻れない。
少ししかない私物を詰めた鞄を手に、東京駅まで行ったのだ…。
でも、改札口を通れなかった…。
この改札口に、入ったら、二度と、東京には、戻れないことを、美紗は知っていたから…。
二度と、こんな勝手な事は出来ないと、美紗の自由は、なくなるのだとわかっていたから…。
それは、自業自得なことだと、美紗は、思っていた。
自分の親にも、洸一の親にも、そして、卒業したとはいえ、高校の先生達にも、心配や迷惑をかけたことは、間違いないのだから…。
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