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りっちゃんがいる建物へと向かう。
すると、建物の前に誰かが立っているのが見えた。蔵屋敷老婆だ。
「なんであんなところにいるんだろう。」
「聞いてみるか。」
俺たちは老婆の元に駆け寄り、疑問に思っていることを一気に聞いた。
「どうして中に入らないのですか?」
「いつもこうなのです。指導中は先生と律様1対1ではないとならぬのです。」
「これも夫人の命令ですか?」
「いえ、先生のお申し付けにございます。なにも先生の指導方法のようなので口が出せぬのです。」
先程の若い男。おそらく俺より5つは下に見えたが、あれほど大きな建物で1対1じゃないと指導できないなんて、何かありそうだ。頭を過ぎるのはすべて負の方向。少女に対する感情がどういったものか、人によっては異なるものだ。少なくとも俺は“かわいい”とは思っても恋愛感情はない。あの男が少女に対して恋愛感情を抱くような人間なら、少し警戒すべきである。
もう一方で、弱い人間に対する支配の欲求。自分がもともと弱い人間だから、さらに弱い相手を己の鬱憤を晴らすための道具にしている可能性だってある。抵抗する人間を力でねじ伏せることで、弱い者に対してだけでも自らの権威を高め、自分が強い人間だと思うようにしている人間かもしれない。
どちらにせよ、早く中に入って彼女を救出しなければ、大きな事件に発展することは間違いないだろう。
“あの目”・・・。
「先程、おっしゃっていた、“あの目”とはどういうことでしょう?」
「・・・聞いていらっしゃったのですか。」
2人の若者も食い入るように話を聞いている。
「1度だけ、先生に暴力を振るわれたことがありました。」
後者だったか。
「指導時刻を数分遅刻した律様にも非はあると思いますが、あれはひどいものでした。」
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