大財閥のお宅にお邪魔する

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老婆の話を聞き始めた時だった。 何かが割れる音。 ドアは開いていない。窓から入るしかないが、この建物にはほとんど窓がない。 「窓割って、中に侵入します!許可を!」 「お、お願いします・・・!」 外から窓のある部屋へと向かう。 普通じゃ鳴らないような音。嫌な予感しかしなかった。暴力家庭教師の存在が分かった以上、あの疑問に対する推理は明確化しつつあった。 傷や痣。それを隠すためのタートルネックと長ズボン。 彼女は誰にも見せたくないそれを必死になって隠している。10歳の少女にそこまでするあの男の神経が分からない。 とにかく許せない気持ちが強くなった。 「ここだ。」 外から窓のある部屋の前に着いた。窓まで結構な高さがある。俺がジャンプしても届かない。侵入する以前に割るのも一苦労だ。 「僕、やります!」 奈美の方を見るとボールを抱えていた。そうだ、奈美なら出来る。 美少年は後ろの方に下がると、5メートル前後の高さにある窓に向けてボールを勢いよく投げた。 そのボールは先程のそれと比べて、格段に速く、正確に投げられていた。 見事に窓に命中すると、防弾素材ではない窓は粉々になった。 割れたのはいいものの、まだ高さはある。 こっちには老婆を抜いて3人。 「肩車だ!」 真理亜の上に奈美、奈美の上に俺が乗る。 「おかしいでしょ!!」 「暴力教師にお前が勝てんの?」 真理亜は口をとがらせると、そのまま黙ったまま、大の男2人を担いだ。 何とか手が届きそうである。 「真理亜、一瞬ジャンプして!」 「無理だよ!」 「ちょっとでいいから!」 真理亜が跳んだ。何とか窓の枠に手が届いたが、下半身に激痛が走る。 しかし、跳んだ直後のみの痛みである俺に比べたら、奈美は着地時の痛みも加算されるため、単純計算で俺の倍以上の痛みを感じているはずだ。声を発さない奈美がすべてを物語っている。 そんなことはどうでもいいとして、俺はありったけの力を込めて壁をよじ登った。
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