大財閥のお宅にお邪魔する

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ドアの鍵を開けに行けば全員入ることができるが、わざわざそんなことしている余地はない。 律の部屋へと向かう。 ドアノブに手をかけると開く様子がなかった。用心深いようだ。 突進するか。 少しだけ助走をつける。ドアに当たる部分に集中する。ありったけの筋肉の力を信用し、そのまま駆け抜ける。 さすがに1回じゃ、開かない。 もう一度助走をつけ、集中。本気でぶつかる。 ドアが壊れると同時に、部屋の中の様子がはっきりと見えた。 床には粉々になって散乱したガラス細工、ビリビリになった写真、カッターナイフ、ハサミ、切られた髪の毛。 大泣きする律。拳を振り上げる家庭教師。 靴の状態だったので、ガラスの破片など気にせず俊敏に男の元に走り寄る。 驚いた男の顔を目がけて、大きく振り回した足を当てる。 思った以上に吹っ飛んだ男は、壁に激突して気を失った。 念のために首元に指を当てる。 ・・・死んではいないようだ。 よく見ると、律のきれいな髪の毛は無造作に切られ、口元には血が滲んでいた。 救世主が来たと言わんばかりに、彼女は俺の方に駆け寄って抱きついてきた。 頭を優しく撫でて、心を落ち着かせる。 「おじさんが来たからもう大丈夫。悪いお兄さんは倒しといたよ。」 どこの優秀な先生か知らないけど、これはれっきとした児童虐待にあたる。警察に連絡しておこう。
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