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数十分後、厚化粧は重たい体を揺らし、だらだら汗をたらしながらやってきた。
この現場には、俺と奈美、蔵屋敷老婆、4人のメイド、誉田誉、家庭教師の男がいた。
厚化粧の第一声には正直驚いた。
「何をやっているの!早く信楽先生をお放ししなさい!」
メイドには事情を話した。つまり、この女にも伝わってるはずだ。なのに、なぜこの男を擁護する。
言われた通り、メイドたちは信楽という男の縄を解く。
よくもまぁ、あの難解な縛りを解くことができる。それにあれを結べる真理亜もどうかと思うが。
解き終えると、肉厚厚化粧は信楽に頭を下げた。
「申し訳ございません!使用人が迷惑をかけましたことをどうかお許しください。」
使用人というのは俺も入っているのだろうか。それこの男の鬼畜のごとき所業は伝わっていないようだ。口を開こうとした瞬間だった。
「構いませんよ。何かこの方が勘違いされたようだ。しかし、顔の怪我はどうしようか思いましてね。」
この男、掌を返した。計算通りではあるが、実際にここまで真実のようにされると、癇に障るところは有る。
「ど、どうされたのですか!?」
「いえね、律さんにごく普通に指導していたんですが、急にこの男性が部屋にあがりこんできて、私の顔面に回し蹴りを食らわせなさったんですよ。」
ごく普通に指導。あれがこの男の普通だと言うのか。今までの生徒はどんな目に遭ってきたのか調べたくなってきた。
中年厚化粧は烈火のごとく俺に向かい、怒鳴った。
「あなた、探偵でしょ!?何でそんなことをするの!!信楽先生に何かあったらどうするというのですか!!この人はね、あの信楽平蔵氏の御子息なの!あなた、ただじゃ済まないわよ!!今すぐ土下座して謝りなさい!!」
呆れたものだ。信楽平蔵というのは現在の与党にあたる国信党の政調会長である。何かつながりがあって、このグータラ息子が家庭教師としてここにきているのだろう。理由など知りたくもないが、だいたい予想はつく。
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