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話を変えて、元の話をする。
「そういえば、誉田様。『クマ』見つかりましたよ。彼女が持ってました。」
弱みを握られた中年厚化粧は少しだけ薄切り肉のようになっていた。
「・・・彼女?」
「ええ。律様です。」
彼女はここにきて確かめてみたいことがあると言った。これは真理亜が受けた彼女の依頼である。決心がつき次第ここに来るとは言っていたが大丈夫だろうか。
遠くに若い女性と少女の人影が見える。
何を確かめたいのだろうか。
信楽はすでに抜け殻になっていた。
メイドたちはどうすればいいのか困惑している。彼女たちには責任はない。
右手で真理亜の手を握り、左手で『クマ』を抱えた律は怯えた表情でここまで来た。
「り、律・・・」
「・・・。」
真理亜は、律の服を臍が出るくらいまで上げた。
生々しい内出血。
背中の方を向くと、見ていられないほどの傷がそこら中に有った。
「どう思いますか。娘の姿を見て。」
中年厚化粧の死んだ目が、怒りに変わっていた。
「勝手に持ち出すんじゃないわよ!!私の大切な『クマ』に、汚らわしい手で触るんじゃない!!」
心が痛くなった。今にも泣き出しそうな律の瞳を見ると、この衝動は抑えられなくなった。
気がつけば、俺の右手の拳は厚化粧の左頬に見事にヒットしていた。
「汚らわしいのはどっちだよ・・・。あんな酷い姿見て、養女とはいえ娘の大切な体傷付けられてんだぞ。それなのに、心配するのはただのぬいぐるみかよ。・・・おい!あんた、なんなんだ?大切なのは、娘じゃなくて地位なのか?名誉なのか?わかんねえーよ。俺には理解できない。」
「でしょうね。あんたみたいな底辺の人間には到底理解できないわ。私は、金があるの。金こそすべてなの。金を持っている人間が偉いのよ。」
救いようがないクズだ。殴る価値もない。右手に付着した、べたべたした頬紅がとてつもなく気持ち悪かった。
「その子はね・・・、旦那と汚らわしい女が作った子なの。その女は客からもらった病気で死んだわ。金がなかったもの。体を使うしか生活できなかったのよ。」
律の方を見る、真理亜がしっかりと耳をふさいでいた。
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