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「困りましたねぇ。」
目の前には厚化粧の中年女性。いくつかの指には高そうな指輪、そして露出度の高いドレスのようなものを着ている。これも高そうだ。
ちなみに依頼は『クマ』がいなくなったので探してほしいとのことであった。おそらくペットの名前だろう。
動物を探すのは、これで54件目。猫などの小動物を捕まえるのはなかなか難しいが、ルドルフがいればなんとかなる。
しかし、今回は事態が違う。
この厚化粧は、あの大手企業、誉田製紙会社5代目社長、誉田剛三朗の婦人、誉田誉だ。
漢字にすると、変な名前だ。
「何ニヤニヤしてるのよ!」
「し、失礼。」
探すのは得意だが、この人の家に伺うとなると大変だ。
東京ドームの倍はある家だ。無駄にデカくする意味を教えてほしい。権力の誇示だろうか。下らないな。
隅々までしっかり使っているのだろうか。無駄に高いものとか置いてあって、壊したりしたら、何を言われるかわからない。ルドルフを連れていくのはやめておこう。
だとしたら、奈美と真理亜か。
「引き受けるの?引き受けないの?」
こちらにだって拒否する権利はある。どうするか。報酬次第だな。
「あなたの気分次第って聞いたから、今日はこれだけ持ってきたわ。」
引き受けよう。
「わかりました。では、明日の朝8時に、そちらに伺います。」
少しだけ頭を下げて出ていく誉田婦人。渡した湯呑みにはベッタリと口紅が付いていた。
「真理亜。しっかり洗っといて。」
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