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Tシャツにジャージは動きやすい。このような重労働になる時はこの格好だ。それにしても夏は暑い。セミの声が騒がしい。
500万を普通に持ってこれる人の家。想像以上の大きさである。着替えを持ってくるべきだったか。
「こ、これが誉田さんの家ですか?」
ど田舎で育った奈美じゃなくても、この大きさは衝撃的だ。
「東京ドーム2個分の敷地面積だそうだ。」
「・・・すいません、東京ドーム行ったことないんで東京ドームの大きさがわかりません。」
「東京ドームの大きさはここの半分だ。」
「なるほど!」
「2人とも、いらっしゃったわよ。」
朝の8時だと言うのに、相変わらずの厚化粧で登場したのは誉田誉である。
「今日中に探し出してちょうだいね。私とあの人は明日からパリに出張だから、一緒に連れていくわ。」
交渉してみる価値はありそうだ。
「申し訳ありませんが、今日中ということは私ども聞いておりませんでしたので、3日分すべての依頼をキャンセルしてここまで参りました。」
「え!?」
少し黙ってろと2人に視線を送る。
「3日分の売上がなくなってしまうというわけです。」
少し考えた様子で婦人は俺を見た。
「わかったわ。昨日のものに加え、1000万出しましょう。1500万くらいで『クマ』を見つけ出してもらえるなら、安いものよ。ただし、見つけ出せなかったら、1000万も渡さないし、昨日の500万も返してもらうわよ。」
「了解しました。それでは交渉成立ということで、依頼を遂行させていただきます。」
婦人は朝から会食だそうで、いろいろとあって夜の12時に帰るという。それまで、家を空けるため、この巨大な敷地にいるのは俺たち3人に加え、30人の家政婦、5人の執事、2匹の犬、そして『クマ』。
今は午前8時15分。
タイムリミットは15時間45分。
俺は2人と円陣を組み、いつものように始めた。
「じゃ、始めようか。」
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