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「これが『クマ』ね・・・。」
「てっきり犬か猫の名前かと思ってました。」
「確かに『クマ』だよ。テディベアだもん。」
拍子抜けした部分もあったが、開始早々見つかったということで、安堵感に満ち溢れていた。俺以外。
気になるのはあの少女である。今日は平日ではないか。これから行くのだろうか?小学校はどうした?俺は蔵屋敷老婆に尋ねることにした。
「律さんは何で学校に行かないのですか?」
老婆は心苦しい表情を見せた。
「奥様の命令でございます。学校程度の教育レベルでは、将来不安だということで、優秀な家庭教師を雇っていらっしゃいます。あと少しで、数学の先生がいらっしゃいます。」
「数学って・・・。今、いくつですか!?」
「今日で満10歳でございます。」
10歳で数学。算数はとっくに卒業したらしい。
人の教育法に対してとやかく言う筋合いはないと思うが、これはどうしたものか。
それに、誕生日なのに家族の誰からも祝ってもらえないのだろうか。
「セキさん!あとはご婦人に報告だけですね!」
「・・・待ってくれ。もう少し調べたいことがある。」
2人の言い分は後にし、律のもとへ向かう。
家庭教師が来るのは30分後。少しだけ聞いておこう。
「りっちゃん、おはよう。」
「おじさん、だぁれ?」
「探偵、だよ。」
「たんてい!?すごーい!」
掴みは完璧。これでも子守の依頼を引き受けたことがある。慣れたものだ。
「なんで、たんていさんがいるのー?」
「その子を探してくれって言われたからだよ。」
「・・・。」
しまった。単刀直入すぎたか。空気が悪いので、話を変換することにした。
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