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すり替えた話のレールがここまで伸びてきてしまった。
今は、広大な敷地内にある広場に、足で線を描いている。
この広場は、目視する限りでは瀬ヶ崎高校の校庭の倍ほどの広さである。
そのど真ん中に、真理亜と2人でそれなりの大きさの正方形を描いている。
奈美は近くのスポーツショップに買い出し中だ。
老婆と少女は不思議そうにこちらの様子を眺めている。
「よし、できた。」
「なんでまた急にさ・・・。」
「打ち解けるためには、これしかないだろ?」
「そうかなぁ。」
完成したことを確かめると、律は蔵屋敷氏から離れ、俺の側にやってきた。
「なにするのぉー?」
「分からないかな?もうすぐお兄さんが帰ってくるから分かるはずだよ。」
柄にもなく優しい口調で話している姿はどう見られているのだろうか。真理亜の方をそっと見ると、口元を手で覆い、笑いを堪えているようだった。
少女は『クマ』を大切そうに腕に抱え、絶対に離さないような様子を見せた。
すると、遠くの方で野獣の鳴き声がした。
また、あいつらか。次襲ってきたらどうしよう。
今持っている食べ物はない。先程のキャラメルの使用はもったいないものだった。
Cの建物の近くには木の実が生る木があった。しかし、そこに行くまでは全力で走って30秒はかかる。
奴らのスピードより速くその木に到着するのは、100メートル世界記録保持者でも不可能だろう。
気がつけば、次回の戦いへ向け、綿密な計画を練っていた。
「あ、奈美君帰って来たよ。」
ボールを抱えた奈美は涙目になりながら、必死になって走ってきた。
「どうした?」
「こ、こ、怖かったー!!」
なるほど、お前が襲われていたのか。
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