プロローグ

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床には脱ぎ捨てた衣服とゴミの入ったビニール袋が錯乱し、部屋中に異様な湿気と悪臭が充満している。 キョウコは足元に注意してリビングへと向かう。 リビングの壁には鏡が立てかけられており、暗い部屋にたたずむキョウコの全身をぼんやりと映し出していた。 服は着ていなかった。 いつからなのか、わからない。 そんなこともう気にかける必要はなかったから。 あばら骨の浮き出た醜い身体も、これで見納めとなるだろう。 ガスコンロの横に備え付けている冷蔵庫の扉を開くと、庫内の光に照らされて、暗い部屋にしゃがみ込むキョウコの影が伸びていた。 汗ばんだキョウコの身体を、冷蔵庫の冷気が心地よく冷やす。 隅々まで見渡しても、もう冷蔵庫には何も入っていなかった。 飲み物も、食料も、何も。
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