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○葉○
「……カミさん、何やってんすか。」
筑前煮のつまった鍋を手にカミさんちに行くと、もう夜の十時過ぎにもかかわらず店があきっぱ。
いつまで営業してるんだよ。
問いかけに応えもなく、これはいよいよ本に集中しきってるらしいとため息をつく。
店内に入り、座敷にまで寄っても本から顔をあげる気配はない。
「……おーい。」
反応なし。
仕方なく鍋は座敷に置き、玄関先から札をとり戸締まりをする。
施錠の確認をしてから、再度カミさんに呼びかける。
「いい加減にしろよ☆」
頭叩いたオレは悪くない
「…………んあ?」
「こんばんはー、もう10時っすよ。店先閉めときましたんで、家の玄関から帰りますね。
あとこれ、作りすぎたんで食って下さい。つかどうせ飯食ってないっすよね、米も今から炊くんで、明日の朝昼もちゃんと食って下さいよ」
ようやくこっちに気付いたカミさんに用件を一気に伝える。
つーかオレが来なかったらこの人どうする気だったんだ。
相変わらずの手のかかりようにまたため息が出る。
「お、うまそう。さんきゅ」
「お粗末さんです。つか、今日は客来たんですか?」
「…………さあ?」
「……。」
誰でもいいから、この人の面倒見てくんねーかな……。
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