フラフラとその1

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ーーーークリク sideーーーー 今日は厄日だ。太陽が真上にすら来ていない時刻…つまり午前中のうちから、私はそう思っていた。 朝起きて、いつも通りに過ごす。 顔を洗い。 歯を磨き。 軽く朝食を食べ。 身支度を済ませて外へでる。 家から足を踏み出した瞬間、靴ひもが切れる。 この時は大して気にしなかった。 靴は予備があるし、さっきの靴は変境地に行ったばかりだし。 気にしない口実なら、いくらでもあった。 しかし、気にしないではすまされない事が起きた。 自宅の近くによく現れる猫がいる。 人懐っこく、甘えんぼうの白い猫。 この辺の住民なら、まず知らない人はいないと言い切れる程の知名度だったりする。 朝、毎日通る道。 決まった場所で踞る白い猫。 すぐにいつもの猫だと思った。 近付くと顔をあげ、可愛くひと鳴きして擦り寄ってくる。 いつも通り、そうなると思っていた。 しかし今日は近付けた手に猫パンチをくらい。 尻尾を逆立て、威嚇したあと走り去る。 しばらく、猫パンチされた手をそのままに、固まってしまったのは言うまでもない。 それほどまでにショックだったのだ。 そのあとも、行く先行く先良いことなど何もない。 これから向かう"ギルド"でも厄介ごとに巻き込まれるのだろうと思うと足は進まなかった。 しかし無情にも時間は過ぎ去るもので、いくらゆっくり歩こうにも、目的地にはついてしまう。 「はぁ」 小さいため息を目の前の扉に吐き、その古めかしくとも丈夫そうな扉に手をかける。 見た目とは裏腹に軽々と開く扉は、木製特有の心地よくも甲高い音を立てながら開く。 「ようクリクっ。早速で悪いが仕事入ってるからよろしくな!」 「はぁぁぁ」 扉を開けてすぐに、こんなことを言われたら誰だってため息はでる。 さらに朝から不幸が続けば、それは重々しくなるのは当然である。 「やけに沈んでんなぁ…なんかあったのか?まぁどうでもいいけどさ」 「どうでもよくないよぉ。聞いてよダリー…シロにシロにぃ……」 「あぁはいはい。仕事から帰ったら聞いてやるから、さっさと行ってこい」 「うぅ。わかったよ何やればいいの?」 「北東にあるサイナスの森で、ドラゴンが目撃されたらしいから調査よろしく」 「はぁい。」
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