フラフラとその1

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光りが収まると、周りの雰囲気はガラリと変わっていた。 心地よい"暖かい風"と、それにつられて踊るように"揺れる木"。 近くに水辺でもあるのか、木々のざわめきの中に混じる"水の落ちる音"。 足元から感じる"地面の鼓動"。 鼻を刺激する甘い中に、どこか"香ばしい香り"。 目を開けば、綺麗に並ぶ"鋭利な牙" …………………牙? 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!?」 自分の口から出たとは思えない奇声を発しながら真後ろに飛び退く。 同時に先程まで自分がいた場所から、重々しい音が響く。 体制を立て直し、顔をあげる。 そこには、こちらを睨みつけてヨダレを垂らす"ドラゴン"がいた。 「…………マジかよ」 取り敢えずどうする? 逃げるか? いや、此処は貰った能力を試すべきか? ………………よし、答えは決まった。 こちらを睨みながら近づいてくるドラゴン。 赤く固そうな鱗。 鼻息に混じる炎。 太く長い尻尾。 牙と同じく鋭く伸びた爪。 見るからに"ファイヤードラゴン"と称されそうなドラゴンに、目を光らせる。 口を大きく開け、すごい熱量とわかる炎を凝縮していく。 今だ!! 瞬間的に感じた。 その衝動通りに身体を動かす。 地を削るように、足に力を入れ 腕は天を貫く如く、振り上げ 顔はドラゴンから離す事なく 身体を180度、"方向転換" 「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 走り出す。 背中に一瞬だけ感じた熱を振り切り。 木々が倒れる音を背に。 ドラゴンから"逃げる"
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