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啖呵切ってドラゴンと対峙してみたものの、どう戦うかは、まだ決まっていなかった。
空間属性で首チョンパも頭に浮かんだが、初戦闘でそれは味気ないので却下。
光属性もあるが、貰ったのは回復用途であるため使うのは、何か気が引ける。
そうなると、残された戦闘方法は肉弾戦と錬金術くらいしかない。
まぁ最悪、使うのは気が引けるが光属性の何かでやればいいし、今は気楽に肉弾戦で抵抗するか
考えてる間に、ドラゴンは近くにいるし
あまつさえ、その鋭い爪で切り裂こうとしている。
降り下ろされる右腕。
俺はそれに右腕を合わせて振り抜く。
瞬間。俺の右腕とドラゴンの右腕が合わさった場所を中心に、重い音と衝撃波が発生する。
俺の右腕は右に流されただけ……肉弾戦が通じた安堵と自分の中に現れた新たな感情に困惑する。
ドラゴンの右腕は後ろまで流れていて、身体も若干仰け反っていた。ドラゴンの顔は、誰もが見てわかる程に驚愕の表情を浮かべている。
なんだ?この気持ちの高鳴り。
肉弾戦が通じるとわかって気持ちは楽になったが………この高鳴りだけはわからない。
ドラゴンもより一層睨みを強めて迫ってくる。
右腕、左腕、火炎、火炎、右腕。
見切れる!?
身体が思うように動く。
羽のように軽い。
痺れを切らしたかのように、火炎の連発。
盛大な爆発音と共に、広がる煙。
終わったとでも思ったのか、ドラゴンは空に向かって雄叫びをあげる。
そんな勝利の余韻に浸っているドラゴンに飛び蹴りをお見舞いしておく。
「いってぇっ!嘘だろっ硬っ」
あまりの硬さに蹴り飛ばした右足に鈍痛が残る。
痛みに悶えているのを他所に、ドラゴンは怒り狂い火炎を放ってくる。
すかさず空に飛び立ち、俺に向かって急降下。
「ウオッ?!」
火炎は横に飛んで避け。
ドラゴンの突進も難なく避ける。
ドラゴンは火炎が通じないとわかるや否や、再び肉弾戦へ
右腕、左腕、牙、尻尾。
そのどれもが必殺の威力を誇るが、当たらなければどうと言うことはない。
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その静かであった草原は、今や異様な光景が写っていた。ドラゴンの必死の猛攻を、涼しい顔で避け続ける黒髪の青年。
はたから見たらドラゴンを遊んでいるようにしか見えないであろう。
そう。この戦闘を森から見ていた少女もまた、そう思っていたのだから。
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