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「星を観に行きたいんだけど・・・」
食事の後、急に彼が言い出しました。
「星を? 別にいいけど・・・ 」
星の事が好きなのは知っていたけど、
一緒に観に行こうって言われたのは、初めてです。
「分かった?」
「えっ どこ? 分からないよ」
「ほら あそこだよ」
肩に手を掛けて自分の方に引き寄せ、星空の1点を
指さしました。
右耳のすぐ後ろで声がして、くすぐったいけど
知られるのは、恥ずかしいです。
「あの3っの星を線で結ぶと三角形になって、夏の大三角
って言うんだ」
彼の指が三角形に動くのに合わせて、私の顔も三角形に動く。
「本当に三角形だね」
(どの星を結んでも三角形になると思うんだけど・・・)
それからも彼は星座のことを、私にいろいろ教えて
くれたけど、目をキラキラさせて説明している彼を見る
のが嬉しくて。
それに、肩や腰に手を回してきたり、顔を近づけて説明
してくれるからドキドキして・・・
彼が後ろから軽く抱きしめてきて、話し出しました。
「俺、小学6年生の頃に毎週の様に天文台で星を観てたんだよ」
「ふ~ん」
「絶対、宇宙飛行士になるんだって思ってた」
「カッコイイね」
「でも高校生の頃から、現実的なことを考えることが多くなっていって」
「今は夢じゃなく別の目標が出来たから」
「何それ ?」
「それはまだ言えないな。それよりも就活は早め早め
に、だぞ」
「うん、再来年かぁ。でもあっという間だね」
「そう あっという間だよ」
彼が卒業した後の2年間の学生生活を考えると憂鬱でした。
社会人と学生、今までのようには会えなくなるし、
何か自分が置いて行かれるような気がしていました。
「淋しいよ・・・あっという間じゃ ないよ・・・」
彼が後ろから強く抱きしめてきます。
キスして欲しくて私から振り向くと、彼も応えてくれて。
(目標って気になるな)
彼の手が両脇を通って胸に・・・
「だ~め!教えてくれないなら
お・あ・ず・け だよ」
胸から彼の手を離すと振り向いて聞き直す。
「目標って何?」
「美穂がずっと笑顔でいられるように頑張って
いくこと、だよ」
「これまでみたいに会えなくなるし、2年って
やっぱり長いよな」
「だから目標にしようって決めた」
「おっ おい ちょっと 泣くなってば」
「ほら こっち おいで・・」
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