第一話

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とりあえず現実を受け入れてみる。 「えー…で、何?なんでいんの?」 「ファイルインストールしたから。」 「…お前の壊したウィルスソフトはどうしてくれる訳?」 「あたしがいるんだからどーんと任せなさいっ!」 ふむ。確かにコイツがいれば俺のパソコンは無敵かもしれない。 …じゃなくて! 「あ、お前じゃなくてエネですよ。」 「細かいな…じゃあエネ。いつになったら出てってくれるの。」 「ほとぼりが冷めたら…ですかね?まー私のことはいいんですよ!」 意味不明なことを言いやがる。 「ねーねー、外行きましょーよー。外。久しぶりに外みたいんですよー。」 「嫌だ。」 俺はここしばらく家から出ていない。 理由はつまらないから。 「なんか奢りますよ?」 「それはありがたい!…ってどうやってだよ。」 「銀行にハッキングして、マスターの口座に一万くらい…」 「わー!わー!止めてくれ!!たかが一万で犯罪者になるのは御免だ!」 本当にうるさい。 でも、エネがいればつまらない現実も少しは楽しくなるんじゃないだろうか。 柄にもなくそんなことを考えた。 「そもそもお前パソコンにいるのにどうやって出かけるつもりだよ。俺にパソコン持ち歩かせる気か? どっからどう見ても不審者だよな。」 「心配ご無用ですよ!」 ポケットの中から声がする。 見ると、俺の携帯にエネが乗り移っていた。 元のパソコンにはエネの姿がない。 「えへへー!びっくりしましたぁ?びっくりしましたよねぇ?…少しは驚いて下さいよ!」 「ワースゴーイ。」 正直もう何が起こっても驚かない自信がある。 というかそもそもこんなイレギュラーな存在がいるだけでおかしい訳で。 今例え空から宇宙人が落ちてこようと驚かないだろう…と思う。 「仕方ないな…一度外に出ればおとなしくなるか?」 「なりますなります!遊園地行きましょ!遊園地っ!!」 「行くのは本屋だ。それ以外は嫌だ。」 「ぶー。ケチ。」 そんなリア充の巣窟に行ってたまるか。 一瞬携帯を置いて部屋を出てやろうかとも思ったが、そんなことをしたら中のデータが全て壊れてしまうだろう。 ここはイヤホンをさして出かけるしかないと思った。 「はいはい。今回だけだからな。」 そう言って俺は身支度を始めた。
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