いつもの二人、時々+α

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「涼のお見舞い?」 「ええ、なんでも風邪引いちゃったみたいで。とはいえ、症状はあまり悪くみたいですけどね」  本日の終業のホームルームを終え、放課となった教室。俺は有名スポーツメーカーのエナメルバッグを肩に掛け、帰り支度の最中である悠真に声を掛けました。  季節の変わり目である6月の上旬。一月後に訪れるであろう夏本番に向けて、気温・湿度ともに右肩上がりの傾向を示しています。  今朝のことでありました。俺はいつもの如く午前7時に起床し、次いでベッド際の窓を開け、50センチほど離れた隣家の窓をこんこんとノックしました。毎日欠かすことの無い、言わば儀式みたいなものです。  しかし、その隣家の2階に自室を持つ涼からの反応が返ってきません。普段ならば、99%以上の確率で起こりうることなんですが、今日はまさかの1%を引き当てたようです。 「涼ー? まだ寝てるんですかー?」  窓一枚挟んでるのでこの声が届くことは無いだろうと思いながらも、いつもなら既に何かしらの反応があるのに、今日はそれが無いことを疑問に思います。綺麗な紫色をしたカーテンが閉まっているため、部屋の中の様子を伺うことはできません。  すると、勉強机の上で充電していた携帯電話が音を立てて震え始めました。見ると、涼からのメールが届いていました。 『From:涼  Sub:無題  本文:すまぬ、我、病に倒れにけり。     So,I'm absent from school today.』  古典文法が入っていたり英語が入っていたりと、実にまとまりの無い文章です。しかし、これでさっき涼の反応がなかった理由が分かりました。  静かに寝かせろ、ということですね。
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