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その感覚の理由は、すぐにわかった。
佐藤が隣に並んだのだ。
ーーこいつ、減速しない気か!!
そう、佐藤は時速180kmを保ったまま、コーナーを曲がろうと言うのだ。
そこで俺は佐藤に関する重大なことを思い出して、納得した。佐藤なら、可能なのだ。
俺も実は、普通よりも速いスピードを保った状態での急カーブが可能だ。毎朝コップ一杯の牛乳を摂取しているためにありとあらゆる恩恵を受けることができる。所謂、牛乳パワーと言うやつだ。
その牛乳パワーが肉体や脳に作用し、不可能を可能にする。200mを4秒で走れるのも牛乳パワーによるものだ。
それに対して、佐藤は一日にコップ二杯の牛乳を摂取している。コップ二杯も牛乳を摂取しているとなると、その効果は計り知れない。
ーー面白い。今まで、手を抜いてやがったか。
俺は軽く呼吸の色を変えて、小さく笑った。
集中する。ここに飛び舞う砂埃から遠くに落ちる木の葉まで、この場の全てに意識を埋め込む。このレースそのものと一体になって、空間を味方にするつもりで、兎に角、集中する。
いよいよコーナーに差し掛かったが、俺と佐藤の差はほとんどない。
さぁ、ここからだ。ここから俺は今までにない危険な賭にでる。いくら徒競走に危険はつきものだと言っても、これほど危険なことをするのは久しぶりだ。
まぁ、良い。徒競走に出ると決めた時点で命の一つや二つは覚悟している。
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