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佐藤は少し言葉を選んでいるような様子で、しかし、はっきりとした声で言った。
佐藤と俺が、互いにライバルとして意識していたのは間違いないはずだ。しかし、実際に話したこととなると、実はあまり無い。
掴みづらい距離感の中で、しかし、この瞬間、俺と佐藤の間では何かが確実に繋がっていた。
「田中……お前、今日、牛乳を何杯摂取した?」
確信めいた聞き方に、俺は少し笑みを浮かべた。
「三杯だ」
「……なる程、それは勝てないわけだ」
牛乳三杯。普段からその量を摂取していない者がいきなり摂取するとなると、その危険度は地上七階建てのビルの屋上から飛び降りるのに等しいとされている。
要は、死んでも不思議ではないということだ。
しかし、そのリスクを背負う代わりに、莫大な牛乳パワーを得られる。リスクが霞んでしまう程に莫大な、牛乳パワーを。
俺はその牛乳パワーに、全てをかけた。いくら身体に負担がかかったとしても、命をかけてでも、徒競走に対しては本気で向き合いたい。
牛乳パワーと共に、寿命まで酷使してしまったような感覚さえあるが、結果を考えればそれも悪くない。
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