普通の徒競走

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 「……なぁ、田中」  佐藤が目をすぼめ、空の更に上を見据えるようにしながら、呟くように言った。  「なんだ?」  「どうして俺達は、他の奴らには勝てないんだろうな」  「……ああ、そんなことか」  俺達の200メートル走のタイムは、学年でも最下位を争う。この学年の200メートル走のタイム平均は、約2秒。俺達は自分の走りに自信はあるが、数字という結果が、現実を叩きつける。  「分かりきったことだろ?他の奴らは、毎日、牛乳を三杯も摂取しているんだ。それにーー」  幼いころから牛乳を多量に摂取している者は、牛乳三杯と言えどリスク無しで摂取できる。  俺達は幼いころにサボり過ぎた。  「ーーそれに、他の奴らは、毎日小魚も摂取している」 小魚パワーは牛乳パワーをも上回る。常識だ。  「はは……。あいつら、化け物かよ……」  佐藤は呟いて、一筋の涙を流した。  空の雲は、決して掴めない。それは雲が手の届くところに無いからなどという理由ではなく、俺達は雲を掴めないということを知っているからだ。  ※二人とも小学生です。
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