1人が本棚に入れています
本棚に追加
「……なぁ、田中」
佐藤が目をすぼめ、空の更に上を見据えるようにしながら、呟くように言った。
「なんだ?」
「どうして俺達は、他の奴らには勝てないんだろうな」
「……ああ、そんなことか」
俺達の200メートル走のタイムは、学年でも最下位を争う。この学年の200メートル走のタイム平均は、約2秒。俺達は自分の走りに自信はあるが、数字という結果が、現実を叩きつける。
「分かりきったことだろ?他の奴らは、毎日、牛乳を三杯も摂取しているんだ。それにーー」
幼いころから牛乳を多量に摂取している者は、牛乳三杯と言えどリスク無しで摂取できる。
俺達は幼いころにサボり過ぎた。
「ーーそれに、他の奴らは、毎日小魚も摂取している」
小魚パワーは牛乳パワーをも上回る。常識だ。
「はは……。あいつら、化け物かよ……」
佐藤は呟いて、一筋の涙を流した。
空の雲は、決して掴めない。それは雲が手の届くところに無いからなどという理由ではなく、俺達は雲を掴めないということを知っているからだ。
※二人とも小学生です。
最初のコメントを投稿しよう!