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僕は真帆のそばにいるべきではないのではないか。
その考えに至った時、刺されたような胸の痛みと共に、つんと鼻の奥が痛んだ。
僕はどうしてこんなことを考えているのだろう。
教室に広がる能天気なクラスメイト達の笑い声が、ずいぶん遠くから聞こえた。
このまま誰にも気づかれず、僕という存在は消えてしまってもいいのかもしれない。脇役として、手向けのようにエンドロールに名前を加えられて。
不意に、机に置いた手に温もりを感じ、現実の音と映像が鮮明になる。ゆっくりと焦点が定められると、目の前にとても心配そうな真帆の顔があった。
「どうした?」
「どうした、じゃないよ。呼びかけても全然反応しないし。何かあったの?」
「……」
口を開きかけて、閉じる。一瞬、今のこの気持ちを全部真帆に告白してみようかと思ったが、そんなことをしても意味がないと気づいた。
彼女は向こう側の人間だから、僕のような脇役の考えがわかるはずがない。共感されてもそれは慰めであって、ただ惨めなだけだ。
「なんでもないよ」
そういって僕は微笑んだ。真帆がわずかに寂しそうな表情を見せた気がしたが、何も言わないので気のせいだろう。
だが、彼女は僕の手を離さなかった。こめられた力がわずかに強くなった気がする。
「……遠藤?」
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