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映画はすばらしい。それはその物語が不完全に完結しているからだ。
主人公たちはどこにも行かず、ずっとそこにとどまり続けている。にもかかわらず、その物語は見る人々の心の中で無限に広がり、無限に姿を変える。
映画は一つの世界を創る。だが、映画には終わりがあり、世界には終わりがない(僕が知っている限りでは、だけどね)。
だからこそ、映画は完全には成り得ない。どこまでいってもそれに終わりがある限り、不完全な断片になってしまう。
しかし、映画はそこで終わるわけではない。先にも述べたように、僕たちの心の中で永遠に広がり続けることができる。つまり、見る人によってそれは完全に限りなく近づくこともできるのだ。それはつまり、新たな世界を創造することに等しくて……。
「ふわぁ……」
「……聞いてる?」
「さあ?」
僕はやれやれ、と肩をすくめてみせた。目の前の遠藤真帆は頬杖をついて窓の外をぼんやり眺めちゃったりしている。
しかしいつも装着しているヘッドフォンを首にかけているので、一応耳を傾けてはくれているようだ。僕も窓の外を見る。
無数の線となり空間を埋め尽くす雨。雨音は心地よい強弱をつけて体に沁みる。そんな雨を見つめていると、なぜかいつも過去に思いを巡らせてしまう。
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