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僕と真帆が知り合ったのは、ここ東都防衛学園中等部に入学してすぐの頃だった。
新しい環境に不安と期待で浮足立つクラスメイト達を観察していると、一人他とは異なる雰囲気の少女が目に付いた。
手入れの必要がなさそうなショートボブの前髪を単色の飾り気のない髪留めで留め、張りのある新品のシャツを気に入らなさそうに着崩した女の子。
お互い微妙な探り合いをしながら距離を縮めようとするやつらには目も向けず、彼女はじっと窓の外の桜を眺めていた。
遠くから見ていた僕は、彼女の周りだけ空気が澄んでいるような気がして、思わずにやけた。
――いた!
せっかくこんな中学生を兵隊として訓練するという特殊な学校に入ったんだ、普通でないやつと知り合わなくては損であろう。
そして彼女のどこか脆く危うい雰囲気は、まさにそういうものだった。
僕が彼女の前の席に勝手に座り顔を覗き込むと、彼女はちらりとこちらに視線を向けた。が、人に興味が無いというように、また風に散る桜に視線を戻す。
その横顔は陶器のように白く滑らかで透明感があった。
「ねえ、君、名前は?」
思い切って尋ねたが、彼女は僕の言葉が聞こえなかったようで、見るともなしにぼうっと桜を眺め続けている。
むむ、と思ったが、そう簡単に挫ける僕ではない。たぶん無視されたわけではないだろう。
だってこの子は、入学したてだというのにヘッドフォンをして周りを完全にシャットアウトしているのだもの。
しかも普通に棒付キャンディなんてくわえてるし。ふーむ。
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