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天使のくれた時間。素敵な映画だ。
主人公ジャックはウォール街で成功をおさめ、自分はすべてをもっていると思っていた。そんな彼が、ある日不思議な青年によって『もう一つの人生』に導かれる。
それは13年前の恋人ケイトと結婚し、タイヤのセールスをしながら二人の子供を育てる平凡なファミリーマンとしての人生だった。
戸惑いながらも次第に、成功をつかむことしか頭になかった自分の心に、人間らしい素直な感情が芽生えてくることに気づくジャック。
その感情の名前にたどり着いたとき……という、大人向けのラブ・メルヘンだ。
このジャンルの映画はあまり得意な方ではないのだが、この映画は別だ。クライマックスに近づくと、もう涙なしには見ていられない。
温かい余韻に浸りながらエンドロールを眺めていると、ふとあるシーンが胸をよぎった。
それはマーケットでの買い物の帰り道、ジャックが自分は本当はもっと成功できる力を持っているのだと語り、ケイトに今の平凡な人生をどう思うかと尋ねるところ。
その問いに彼女は、とても満足げな表情で、甘い吐息を漏らすようにこう呟いた。
「最高のサクセスストーリー」
胸に疼痛が走る。今はもう、何かの媒体を通してでしか見ることのできない、その人の顔を思い浮かべた。
――母さん。
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