いかなる運命のもとでも、精いっぱいに

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 その翼で風を打ちつけ、壮大な空へと飛び立つことが不可能なのは、誰の目にも明らかであろう。  だがそれでも、その姿は力強く、まるで一枚の絵画のように壮厳で、  美しかった。  龍は、いや、年老いた彼は、その役割を果たそうとしているのだ。力無き今、空を飛ぶことも、両の脚で立つことすらままならぬその身体で。  ならば私も、己の役割を全うせねばなるまい。気高き魂。ただその誇り高き遺志を、讃える為にも。  胸は焼けるように熱く、いつしか頬には一筋の滴が零れていた。  私はそれを拭うことすらせずに、ただ前を見据え、背後に控える仲間に声を掛ける。 「それでは諸君、参ろうか」image=462019856.jpg
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