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《チョコレート味》
窓から惜しみ無く差し込んでくるオレンジ色の光が眩しくて、思わず目を細めた。
もう夕日が出るのか…早いな。
目を通していた書類を机に投げると、俺は長椅子にダイブした。
一眠りしてやろうか‥いや、夕日があんなにでかでかと見えるなら日が沈むのも早いハズ。
さっさと帰るべき、だな。
すくっと立ち上がると俺はカバンを持った。
“ガチャ”
「「あ」」
ドアを開けたら、そこにいたのはちっこい怪獣━━━━という名の彼女。
彼女もどうやらこの部屋に用事があったらしい。
「どうした?」
「おやつ、食べに来た」
「はぁ?」
そう言って彼女はファイルがいくつも並んだ戸棚を指差す。
────そんなトコにおやつなんて突っ込むなっつーの…
彼女はつかつか中に入るやいなや、棚からチョコやら飴やらクッキーやら‥とにかくたくさん出す。
床にボタボタ落ちたのにもわき目も振らずに。
「おいおい、落としてるぞ‥」
「う?」
俺が拾いに中へ戻ると既に彼女は口にそのお菓子達を頬張っていた。
食い意地張りすぎだろ‥
「うまいか?」
「うー♪」
ほっぺたをリスみたいに膨らませたまま、彼女は嬉しそうに返事する。
「ひとつ、もらってもいいか?」
「ダメ、やだ。絶対無理」
はい、間髪入れない返事がきたよーコレ。
つか、絶対無理って…ヒドイだろ!
俺が黙ると、彼女は引き続き食べ始めた。
━━━━間食禁止を校則に加えるべきだな‥
とか、ぼんやりと考えていると彼女の顔がいつの間にか俺の目の前にあった。
何だ?と首を傾げた瞬間、俺の唇にマシュマロのような柔らかい感触とふわりと香るチョコレートの匂い。
あ、キスされたと気付くのに少し時間がかかった。
「おいし?」
至近距離で甘く呟く彼女から、チョコレートの匂いがして鼻をくすぐった。
俺の顔が真っ赤になったのは言うまでもない。
そんな、放課後の秘密。
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