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※ ※ ※
「うっはー、中学以来だ。此処来んの」
京都駅の新幹線口を降りて早々の櫻井の一言に、苦笑を思わず漏らした。
「お前、相変わらず発言が男前な」
「えー、んなことないけど?」
「そんなことあると思うよ、侑(ユウ)ちゃん」
「明里(アカリ)までひっどいなぁ」
口では拗ねてるが、櫻井の顔は笑っている。高校卒業直後は、かなり沈んでいたようだったから、連れて来て正解だったと口元を緩めた。
「侑姉達、速いよぉ」
「俺達のこと置いてきぼりかよ、あーちゃんも侑姉も透兄もぉ」
疲れきった様子で、合流したのは櫻井の妹の真紀(マキ)と槇野の弟の慎太(シンタ)。
そういえば、改札からは後ろを振り向かなかったなと思ったのは内緒だ。
「悪い、櫻井がとっとと歩くから追い付くのに夢中だったわ」
「うわー、ひでー…」
「これはもう都路里(ツジリ)の抹茶アイスは透ちゃんのおごり決定っ」
「へー、へー。好きなだけ食えよ」
拗ねる2人にまだまだガキだなと眉を下げつつ、腕時計を見る。
もうすぐ約束の時間だ。
「そろそろ、か…」
「迎えの人?確か、透君の伯母さんだっけ?」
「あぁ、でも『小母さん』とかいうなよ?あの人怒るから」
「じゃあ、なんて呼べば?」
「『小百合(サユリ)さん』」
答えながら、辺りを見渡せば、着物を着た女の人が、オレを呼びつつ、手を振りながら歩いて来る姿が見えた。
「ほら、噂をすれば何とやらだ」
数年前に会った時と変わらないその人の姿に、表情が自然と綻ぶ。そんな顔をしたら、途端にからかわれるというのを失念していたオレは伯母――いや、小百合さんが側に来るまで、櫻井と槇野にからかわれた。
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