序章

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 いや、派手にケンカして帰ってきて、父親にこっぴどく叱られ叩きのめされたせいもあるのだけれど。  うーんと伸びをしていると、土蔵の扉がゆっくりと開いた。梨花を叩きのめして、ここに閉じ込めた張本人のお出ましだ。 「おはよう、梨花。昨日はよく眠れたか」  精悍(せいかん)な顔がさわやかに笑う。萌黄(もえぎ)色の胴着に濃色の袴という組み合わせがよく似合う、体格のいい男性。梨花の父親だ。 「ふん。人を叩きのめしといてよく言うよ。この性悪筋肉バカ親父」  昨日の恨みを込めて指差すと、突然棒手裏剣が飛んできた。 「うわぁっ」  顔面直撃コースだったそれから、梨花は紙一重で右によけた。代わりに、後方にあった壺が割れる。
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